Talk about 1983 その5

Alfred Beach Sandal北里彰久と、王舟による1983ロング・インタビュー。残り2回です。今日は、フロントマン2人の音楽的ルーツ、そして歌詞の話。


王舟 1983って演奏も上手くてアレンジも凝ってるんだけど、他愛もないことを歌ってたりするじゃないですか。それはどういう意図があって?

北里 でも、そもそもあの歌詞を他愛もないことと受け止めていいの?基本的に自分の感情とかを言うんじゃなくて、情景とかを描写する感じだと思うんだけど。それは意図とかはないのかもしれないけど、どういう出方で出てるのかは分からないから。歌詞は書いてるのは半々だけど統一感はあるよね。
「おれはこう思う」っていう歌詞じゃないっていう統一感。

新間 そこを音楽で言ってもしょうがないでしょ。

北里 でも、そう思う人だっているし、そうじゃない音楽だっていっぱいある。それは良し悪しじゃなくて、それぞれの姿勢だから。

関 でもやるんだよ、的なテーマはありましたよね。

王舟 でもやるんだよ感っていうのはどういうことなの?

関 人の情けなさみたいなところなんじゃないのかな。

北里 歌詞を作り始めるきっかけって何かあるの?情景みたいな、おれが歌詞を読んでて思うのは景色みたいなものがフックなのかなと思ったけど。光景とか、思い浮かべた場面とかをそれを言葉にするみたいな。どっちかって言うと自分もそのタイプだけど。

関 基本的にありますね。田舎育ちなので、自然っぽい。

王舟 東京以外のバンドがお洒落な感じでやってるのを見るといいなと思うんだけど、それがありのまま出てる感じがすごく良くて、つまり、土着感はありつつのそこから飛躍しようって感じがいいなって。おれも栃木だから。

関 一段階ある感じですよね。自分の世界があって、都会があって。

王舟 つまり、ルーツミュージックと似てるコンセプトがあってすごくいいと思うんだよ。

北里 自分の中にあるってことだもんね。最初の光景とかが。

王舟 だから1983って割とそういう感じがあるよね。シティポップが何で洗練されるかっていうと、シティがぐちゃぐちゃしてるから洗練されたいっていう。

北里 おれ、シティポップのシティって要するに情報量だと思うんだよ。情報が多いってことがシティポップってことにされるんだなって。

関 確かに。何でも知ってるのを良しとする感じはないかな。

王舟 ほんとのシティポップはもっと混沌としてるからね。みんな、似たようなもんだよ。いいと思った情景を切り取って洗練させてる。ただ、もうちょっと町から外れたところのほうが混沌が少ないからより混沌とする傾向が、混沌がないところからしたら混沌が輝かしく見えるから、そこをちょっと入れたくなる。音楽って最初からみんながシティでポップやってたら成り立たなくて、地方から始まってるから。カントリーとかブルースとか。

北里 プリミティブとか言うと軽いけど、身体ひとつで出てきたもんは強みじゃん。それが洗練されてるかどうかとかは別の話で。ボディ感っていうか、この人、身体一つでギターひとつで出てきてやってんだなっていうものが(1983に)感じられてグッとくるものがある。

王舟 それがプレイヤー気質な人たちに囲まれて、かつプレッシャーなくやれるっていうのは珍しいよね。バンドやって有名になるとかそういうこともなく、目的意識が曖昧だからボディから音楽やる人と、ボディに理論が入ってる人が交わりながら音楽やるっていうのがいいよね。
プレイヤーをずっとやってきた人たちに出会わないと、自分がそっちに行かなきゃって感じにならない?

北里 結局、どっちも必要なことだっていうのは思うし。プレイヤー気質の人たちだけが集まっても音楽って面白くならないから。単純に楽器のパート分けに近いもので、どっちの人間も必要なんだよ。

王舟 でも、人間性が先で選んだわけでしょ?

北里 だから、それが結局正解なんだよ。1983の中で上手いことバランスは取れてるわけだし。

関 けっこうフィジカルですよね。理論的というよりは。

王舟 だからボディ系が何かって言ったら、情熱だよ。

北里 エモは必要だよ。エモって言うと変な風に伝わる可能性あるけど。だから、関君の音楽的な話をさ、メロコアから話が止まってるから。柴崎くんのとことかから。

関 学校の合唱は好きでしたね。

王舟 ただの一人の人間が声帯震わせて音出して気持ちがいいっていうのは発見だよね。

関 クラスでも率先して歌う感じでしたね。どっちかっていうと。

新間 おれもそうだった。音楽の先生が良くて楽しかったなぁ。成績も10段階の10。

北里 まあそれは合唱でしょ。でも、具体的なバンド名は?

関 ここ(新間との)共通点はThe Bandとかアメリカン・ロック。Gram Personsとか。

北里 自分の中でこれは最初にめっちゃはまったやつは?

関 それはRadiohead。だけど難しいね、自分のルーツを考えるって。

北里 ルーツを考えなくてもいいんだよ。そのポイントポイントではまったやつで。

関 あとはAnimal Collectiveとか、USもの。

新間 おれはその辺全く聴いてないな。あとはやっぱり細野晴臣とThe Band。

関 それはめちゃくちゃ真剣に聴いてました。The Bandの1stとか2ndとか諳んじられるくらい。

北里 おれはそんなにはまれたものないわ。このアルバムのここがいいとか。人に興味が無いんだな。

関 おれはどっちかっていうと人に興味があります。聴いてるとき、この人はこういう人かなって。

北里 人で興味もつパターンも確かにあるけどね。でも面白い人の音楽でも退屈な瞬間はあるな。

王舟 面白い人がやってる音楽が退屈になることないよ。

関 それはある。どんなダメ音源でも最高かなって思っちゃう。加勢したくなるよね、このときちょっとコンディション悪かったのかなって。(笑)

新間 おれはビーサン寄りかな。パーソナリティとかどうでもいいから。

王舟 パーソナリティ以外、音楽にはないでしょ?

新間 パーツでしか聴いてない。聴き方としてここはパーツとして素晴らしいなって。

北里 音楽聴いてて一瞬でもあっとなる瞬間があればそれだけで結構うれしいかな。それを言ったらおれはそういう最高って思える人に出会ってないのかも。王舟にとってのThe La’sみたいな存在がないから。

王舟 それは好きになり方だよ。自分が好きになるものは自分を肯定するものでもあるじゃん。